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2020.02.12
服部 文哉先生のパワエレ講座6

半導体素子の使われているところ

それでは本当に半導体スイッチング素子は使われているのでしょうか?今回はここを議論していきます。

早速ですが、第2 回でお話したアダプタを見てみましょう。図1 の通り、実はダイオードが使われています。「こんだけっ?」って思いませんでしたか?今はまだシンプルな構成ですが、これだけで交流電圧を直流電圧にすることができるのです。

図1 アダプタと中身 図2 全体回路

まずはアダプタに搭載されている全体回路を見てみましょうか。図2 を見てください。
このアダプタはコンセントからはじまり、①AC(交流)→②ヒューズ→③トランス(変圧器)→④整流器→⑤電解コンデンサという電気の流れで、最終的にDC プラグから所望の機器へ、例えばゲーム機とかパソコンといったものに電力を供給しています。

①~⑤に関して、1 つ1 つ順を追ってみていきましょうか。

図3 コンセントと交流電圧①AC(交流)
こちらは家庭にあるコンセントと同じです。だいたいはAC100Vの交流電圧が来ていると考えてください。下図の通り、両端に±141V のピーク電圧が印加されていますよ。

②ヒューズ
今までヒューズの説明はしていませんでしたが、ヒューズとは“電気回路に異常電流が流されたときに電流を遮断し事故を防ぐ素子”のことです[1]。詳細は参考にしたエス・オー・シー株式会社のHP をご覧ください。
図4 ヒューズの例ヒューズの図は図4 に載せておきます。この端子間に電流を流して、予期しない電流が流れた時に端子間の電気的接続を遮断してくれます。アダプタに搭載されているものはもっと小さいです。

③トランス(変圧器)
アダプタの中身でいうと図1 の鉄の塊の部分です。アダプタ内部で最も大きな素子ですね。トランスは絶縁と電圧変換を兼ねています。絶縁はどこかの記事にお願いするとして、今は電圧変換のお話をします。トランスは交流電圧の上げ下げをできる電圧変換素子となります。
図5 トランス(変圧器)の役割図5 で簡単説明しますが、トランスを通すことで、今回のアダプタの場合は±141Vを±10V 程度まで下げています、多分…(測定してませんので、正確な値はわからないです。すいません…)。もちろんですが、図の赤い矢印の通り、電圧を上げることもできますよ。簡単に電圧の上げ下げができるので重宝されています。

④整流器
整流器…。ついに半導体スイッチング素子がでてきました。このアダプタではトランスの出力に4 つのダイオードが使われています。ではこの4 つのダイオードは回路内でどのような役割を果たすのでしょうか?
図6 負荷が抵抗のみの場合図2 の全体回路ではわかりにくいので、図6の分かり易い回路で考えてみます。まず、トランスの右側(出力)は交流なので、交流電源にしました。そこに整流器を接続します。最初は簡単のため、キャパシタがない抵抗だけの回路を考えてみましょう。「DC プラグは?」って思われるかもしれませんが、DC プラグの先はパソコンとかゲーム機と繋がっていて、電力を消費するので抵抗と等価と考えることができます。もちろん抵抗値、パソコンやゲーム機の状態によってその抵抗値は変化しますが、今回は簡単のために抵抗値は一定で一定の電力を消費するとしましょう。さて、では回路動作が…と言いたいところですが、少しダイオードの復習をしましょう。

図7 ダイオードの特性ダイオードは1 方向にしか電流を流さない素子というのは覚えていますか?
では、どういった挙動を示すのでしょうか?
図7 に市販されているダイオードの電圧電流特性グラフ(データシートから抜粋)を示します[2]。ダイオードは図7 の通り、赤色の矢印方向に電流が流れると黄色の矢印方向に電圧が発生します。ただし今回は、整流器の動作を理解するため、赤線で示した特性を有する理想ダイオードとして扱い、電流を流しても電圧が発生しない素子として扱います。この条件を基に、早速ですが整流器の動きを見ていきましょう。

図8 整流器の動き整流器への入力(※左側が入力)が交流の場合、整流器は交互に2 つのMode で動作します。
それぞれを図8 に示します。この図のMode をそれぞれMode1 とMode2 と名付けます。
Mode1 において、整流器の入力側では交流の電圧が+側に発生しており、整流器の出力側では上向きに抵抗に電圧が印加されています。一方で、整流器の入力側では交流の電圧が−側に発生していますが、整流器の出力側では上向きに抵抗へ電圧が印加されています。したがって、入力電圧(交流電源電圧)と抵抗電圧(等価的な抵抗の電圧)の関係は図9 の通りとなります。図9 整流器の通過前と通過後の電圧
あら、みてびっくり、交流が直流になっているではありませんか?整流器はAC-DC 変換器なのですね。
ちなみに交流を直流にすることを整流と言います。だから整流器なんですね。
この変換器はいまだに色々なところで使われていますので、覚えておいて損はないですよ!
ではこの出力(抵抗の前段)にキャパシタが入るとどうなるでしょうか?

お話はしたいですが、今日はここまでにしましょう。
次回はキャパシタを入れた場合の回路動作を見ていきます。
キャパシタの特性を再度考えて、どうなるか考察してみてくださいね。
次回でこのシンプルなアダプタの動作はマスターできると思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。

 

参考・引用文献
[1] エス・オー・シー株式会社HP.
https://www.socfuse.com/ja/about-soc/profile/
[2] ローム株式会社製ダイオードデータシート
https://www.rohm.com/datasheet/RB085BM-40