三相インバータの電圧と電流
前回の続きといきましょう。みなさま三相インバータの電流位相が120°ズレるってお話しましたよね?本当にそうなるかシミュレーションでも見てみましょう。そもそもなぜ120°ズラさないといけないかという話は私も勉強してまた別の機会にしたいと思います…。
図1は三相インバータの出力負荷をインダクタLと抵抗R(後述からLR負荷と呼ぶ)とした場合です。簡単なモータ負荷のイメージでよいかと思います。さて、これらのLR負荷に正弦波電流を印加するにはどうしたら良いでしょうか?
過去の資料を思い出してください。正弦波になるように負荷に電圧を印加したらいいんですよね。
…となると、そのためには、スイッチS1-S6をどのようにON/OFFさせたらいいのでしょうか?そこは次回考えるとして、各LR負荷に流れる電流から見ていきましょう。ちなみにLR負荷の値は各抵抗と各インダクタで同じ値としています。
図2はLR負荷に流れる電流波形です。先ほど言った通り、120°ずつズレた電流が流れていますね。これらの電流波形が滑らかな正弦波でなく、少し角ばって見えるのは正弦波電圧が印加されているのではなく、矩形波電圧が印加されているからです。では印加される電圧を次に見てみましょうか。
図3が各LR負荷にかかる電圧です。…急にぐちゃぐちゃになってきました(笑)。私も最初にこれを見たときは何でこんな電圧で出力電流が正弦波になるの?って感じでした。
ところで図1の抵抗R1とインダクタL1、抵抗R2とインダクタL2、抵抗R3とインダクタL3ならびにインダクタL3に印加される電圧をそれぞれVLR1、VLR2、VLR3 としています。正直これだけみたら、何が何だかって感じですよね…。入力電圧Vin=300V から電圧が印加されて、各LR負荷の関係で矩形波電圧が ❝抵抗電圧+インダクタ電圧❞ として印加されています。
何か他に分かり易い方法はないものか…。ということで、図4の印加電圧と正弦波の比較波形を作ってみました。前回か前々回の話で、移動平均の電圧の話をしましたよね?そこで、出力電圧VR1と正弦波を重ねてみたということです。不思議なことに、移動平均的にみるとR1とL1の負荷に印加される電圧は正弦波に近くなりそうな気がしますよね。つまり、矩形波電圧の移動平均によってLR負荷への印加電圧が正弦波電圧となるように電圧を印加しているだけなのです。
矩形波電圧が連続に印加されているので、頭の中で???が浮かびますが、電圧が大きな時間軸でどのように印加されているかで判断すると(電圧の移動平均で判断すると)、何となく回路内における電圧と電流の関係性が理解できてきた気がします。これらを鑑みると、スイッチデバイスのON/OFFによって、自由自在に電流波形が作れちゃいそうな気がしませんか?
なんのこっちゃって方は次回各ハーフブリッジがそれぞれのLR負荷にどのような影響を与えるか見ていきましょうね。今回はここまで。お読みいただきありがとうございました。