データシートに記載されている単語
それではMOS FET のデータシートを見ていきましょう。ちょっと復習ですが、実際のパッケージ(TO-247)と回路記号は図1 の通り対応しています。ドレイン、ソース、ゲートという名称も覚えておいてください。それでは、頻繁にでてくる単語を並べて解説していきます。
絶対最大定格
そのままですが、ここまではMOS FET の動作が保証できますよーって値です。パラメータとしては電圧、電流、温度、損失などがあります。実験では最終的に温度問題でいつも悩まされます…
ドレイン-ソース間電圧
これは文字のまんまです。図1 の回路記号に対応させると、ドレインとソースの間の電圧という意味になります。だいたいデータシートを確認する場合は、どれくらいの電圧をドレイン-ソース間に印加できるかなぁって感じで確認します。会社によって選定法は異なりますが、データシートに記載されているドレイン-ソース間電圧の絶対最大定格の約7~8割程度で使用しています。
ドレイン電流(直流)
これはMOS FET がオンしてる間に、ドレインからソースへ流れる電流です。
ドレイン電流(パルス)
さきほどの直流電流ではなく、MOS FET がオンしているときのドレインからソースに流せる矩形波のパルス電流です。だいたい流せるパルス電流の期間がデータシートに記載されています。
許容損失
これはそのままでMOS FET が許容できる損失のことです。
熱抵抗
文字通りですが、熱の伝わりにくさを表すパラメータです。熱抵抗が大きいパッケージほど、熱が逃げにくいので、大電力用途には向きません。なので、装置を小型化したいときは慎重に選びましょう。
ゲートしきい値電圧
前回もでてきましたが、MOS FET をオン/オフさせることができる境界の電圧です。やはりMOS FETの固体によってばらつきがあるので、最小値と最大値で定義されています。これは複数個のFET を回路内で並列につなげたり、直列につなげたりするときに厄介な問題となります…。ゲートしきい値電圧のばらつきは回路設計者側からしてとても扱いにくいのです。特に高周波では問題が顕在化してきます。
ドレイン-ソース間抵抗
名前の通り、MOS FET がオンしたときのドレインとソースの間の抵抗です。MOS FET はスイッチだからといってオンしたときに0Ωというわけではりませんので、あしからず。これも注意が必要なのですが、ゲートとソース間に印加する電圧で大きく変わってきますので、MOS FET を使用する際は注意が必要です。多分、前回お話したような…
(内部)ゲート抵抗
データシートに掲載されているゲート抵抗は内部ゲート抵抗のことかと思います。これは図2 の通り、MOS FET のチップを作成したときに、内部に生じてしまう抵抗となります。MOS FET を駆動させるときはこの値も注意が必要です。特に高周波では回路を駆動させたときにMOS FET の発熱の原因となります。
ゲート-ソース間容量
図3 の通り、ゲート-ソース間にある容量です。ゲート-ドレイン間容量図3 の通り、ゲート-ドレイン間にある容量です。
ドレイン-ソース間容量
図3 の通り、ドレイン-ソース間にある容量です。入力容量データシートではCiss で記載されますが、ゲート-ソース間容量とドレイン-ソース間容量を足したものです。ドレイン-ソース間の電圧に依存するのがネックです。覚えておいてください。
出力容量
データシートではCoss で記載されますが、ゲート-ドレイン間容量とドレイン-ソース間容量を足したものです。オフ時のMOS FET を意識しているのだと思われます。ハードスイッチング回路ではMOSFET の発熱原因になります。
帰還容量
データシートではCrss で記載されますが、ゲート-ドレイン間容量そのものです。こちらも容量がドレイン-ソース間電圧に依存します。また、MOS FET がハードスイッチングする際に生じるミラー効果の原因となるものです。
ゲート(総)電荷量
スイッチを駆動させるのに必要な電荷の量です。この電荷をMOS FET のゲートに注入することで、MOS FET のオン/オフを実現します。この値が小さいものほど、高周波用途に向いています。
…ちょっと上げただけでもきりがないですが、まだまだたくさんあります。次回は、データシートのグラフが何を意味しているのか確認していきましょう。
参考・引用文献
[1]ローム株式会社HP:
https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet
/discrete/transistor/mosfet/r6020enz4c13-j.pdf