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2019.08.01
服部 文哉先生のパワエレ講座2

パワエレの電力変換

前回はパワエレ技術が身の周りに使われていることを紹介しました。そこでは電気が色々な形に変換されていましたが、今回はその形を具体的に紹介しましょう。 右図に着目してください。これは電気の変換の形をまとめたものです。簡単にするため、まっすぐな電圧でイメージしてください。まずは (a)から(b)へ、直流から直流に変換する DC-DC 変換です。これは元の電圧を上げたり、もしくは下げたりします。例えば、プリウスのハイブリッド自動車用バッテリーの電圧はモーター(クルマのタイヤを回す装置)の高速回転時にある値まで電圧を上げたりします。私たちは電圧を上げたりすることを昇圧、下げたりすることを降圧とよく言います。この変換器は一般的には DC-DC コンバータ(コンバータは変換器の意味)と呼ぶので覚えておいてください。よく業界の方は“DD コン”なんていったりもします。他では再生可能エネルギーで知られる太陽光発電装置にも搭載されています。 続いて直流から交流の DC-AC 変換は何に使われていると思いますか? そうっ!モーターですね。モーターはロボット、クルマ、エアコン、扇風機などさまざまな装置に搭載されています。実は世界の電力消費量の 40%~50%はモータで消費されているんです[1]。ちなみですが、この変換装置はインバータとよばれ、出力の周波数は電力変換器で自由自在です。また、あまり DC-AC コンバータとは言われません。この由来は後ほど。 に AC-AC 変換です。その名の通り、交流から交流をダイレクトに変換し、電圧だけでなく、周波数の変換も実現します。こちらはすでに日産のクルマ向け急速充電器で製品化されています[2]。 最後に AC-DC 変換器です。こちらは数多くあるので、親近感がわくパソコンのアダプターを代表例として取り上げましょう。例えば私の使っているパソコンは次のページの図 2 の通り、入力がAC100V~AC240V の周波数 50~60Hz で、出力は19V です。よって、AC100V~AC240V から DC19Vをだす電源装置となっています。この変換器は交流から直流なので AC-DC コンバータと呼ばれます。ところで先ほどありました DC-AC コンバータはAC-DC コンバータの逆の動作をするので、その意味を込めてインバータと呼ばれています。

DCACアダプター

見てみてびっくりっ!!アダプターの進化

アダプターの進化

 

さて、簡単な変換に関しての説明は終わりですが、せっかくなので、パワエレ技術の進化とともにアダプターがどのように進化しているか見てみましょう。図 3 を見てください(写真が汚くてすいません)。左の大きなアダプターは私が幼少期に遊んでいたファミコンで使われていたようなアダプターです。私くらいの年代の方は懐かしいのではないでしょうか?
その中身が右隣です。中身はいたってシンプルで、電子部品が 8 点程度ですね。続いて、真ん中は私が5 年前にかったアダプターです。大きさが左のものと比較して、なんと 1/4 に!。パワエレ技術はすごいですね。その代わりに中身の部品が増えています…。20~30 点くらいはあるんじゃないでしょうか?最後に一番右側の最新アダプターです。“あれっ?左と比べてあまり変わってなくない?”と思ったあなた、電力で比べてみてください。左から、7.65W、11.7W、27W で 5 年前の 2 倍以上になっています。最新のデバイス“GaN”が搭載されており、この恩恵が大きいのではないかと思っています。もちろん回路方式も違うのでしょう。こちらはこれから分解予定ですが、中身が楽しみです。是非こちらの記事でも紹介させていただきます。 ところでですが、実は私自身すでに RAVPower 製の最新アダプターも分解したことがあり、こちらは部品点数が 50 点以上で新しい回路方式が使われていました[3]。部品確認で気が滅入りました…。しかも部品が小さいといったら…。いいことですが、歳をとると悩ましい…。けれども、電源が小さくなることは私たち生活の利便性が向上するので、非常に良いことです。オムロン株式会社の財津様も“究極のゴールは、装置から”電源”を無くすこと”とおっしゃっていますので、本当に電源を感じさせない未来が到来するかもしれませんね[4]。誤解なきよう詳細は参考[4]の HP をご覧ください。 今回はここまで。お読みいただき、ありがとうございました。

参考・引用文献
[1] 一般社団法人日本電機工業会, “トップランナーモータ”
[2] 境野 真道, “電気自動車の普及を支える急速充電の技
術”, 電気楽学会公開シンポジウム, 2016 年 2 月 24 日.
http://www.iee.jp/wp-content/uploads/honbu/03-
conference/data-31/symp_160224/doc01.pdf
[3] RAVPower HP.
https://www.ravpower.jp/
[4] EDGE 切り拓く、未来を創る(最終閲覧日 2019 年 6
月 28 日), “電力をムダにしない未来へ。鍵を握るの
は「存在を感じさせない電源システム」~パワーエレ
クトロニクスのエキスパートが若いエンジニアたち
と描く夢~”, オムロン株式会社 HP.
https://www.edge-link.omron.co.jp/news/144.html