クルマのなかみ!?
さて、クルマのなかみを見てみましょう 。
今回はオークリッチ国立研究所の資料、“ EVALUATIONOF THE 2010 TOYOTA PRIUS HYBRIDSYNERGY DRIVE SYSTEM ”を参考にしてみます[1]。
この資料はでは図1の通り、トヨタの第3世代の“プリウス”を分解しています。実はこのクルマ、私も長年乗っておりました。やはりガソリン車より燃費が良かったです。現在は代車にされていますが… 。大変お世話になりました。
ではパワエレ技術のかたまりが本当にクルマ(電気自動車)へ搭載されているのでしょうか?その技術の塊の1つが図2に示すパワーコントロールユニット(PCU)です。「おいおい、金属しかみえないぞ… 。電気素子はどこなんだ…。」と思ったあなた、安心してください。
PCUを分解して電気素子が見える画像が 図3になっています。図3の左下に見える緑の部分はPCUの電力変換器を制御するコントローラー部です。見にくいですが、キャパシタとか抵抗が載っています。この記事で初めて登場するマイコン[2]も搭載されています。この基板ではマイコンを制御して、半導体スイッチングデバイスのための制御用信号を作っています。プログラムを書いてマイコンを動かすのですが、その話はまた今度。
ところで 図3の右下の黒い部分はモールドされたキャパシタ(capacitor)になります。クルマレベルにもなるとキャパシタの大きさも想像以上です。
ところでモールドって何?って方は参考文献のキーエンスのHPを参考にしてみてください[3]。パワエレでも非常に重要な技術なんですよ 。
次に、図3左下の裏側PCU(多分ですが)のなかみを見てみますと、図4の通り、インダクタ(inductor)が搭載された部分も見受けられます。インダクタも大きい…ですね…。
ではちょっとマイコンを含まないPCUの回路をみてみましょうか。図5はコントローラーを含まないPCU回路図です。 左側からバッテリ(Battery)→ DC‐DCコンバー(Bi‐directional DC‐DC converter)→インバータ(Inverter)の流れです。 勉強してきたチョッパ回路も搭載されていますよ。Bi‐directional DC‐DC converterってやつです。これは左側から右側の流れが昇圧チョッパ回路、右側から左側への流れが降圧チョッパ回路です。ダイオードの部分がスイッチに置き換わっていますが、動作はあまり変わりません。
ちなみに図4の右側はインバータです。6つのスイッチで構成されており、モーターとジェネレータ用に分かれています。このインバータのお話もまた今後しましょう。
あと残すは半導体スイッチングデバイスです。では図5にクルマに搭載されている半導体スイッチングデバイスを示します。左から、チョッパ回路用、ジェネレータインバータ用、モーターインバータ用です。なんか今まで見てきなスイッチングデバイスと違いますが、これは一般的にはモールドされている部分の中身を見ているからなんです。
今まで紹介したものも中身を見てみたらこの構造に近いものもあるはずですよ。当時のクルマで使用するときは図5の裏面に水を流してスイッチングデバイスを強制的に冷やしています 。冷やし方も重要で、しっかり冷やさないと デバイスの温度が偏って、スイッチングデバイスの能力を最大限に引き出せないこともあるので、冷却技術もパワエレで は非常に重要な技術になるのですよ。
みなさん、どうでしたか?クルマにパワエレ技術が搭載されてることが確認できましたね。また電気回路だけでなく、他にもさまざまな技術が必要であることがご理解いただけましたでしょうか?
今回はここまで。質問があればお待ちしておりますよ。
参考・引用文献
[1]
EVALUATION OF THE 2010 TOYOTA PRIU S
HYBRID SYNERGY DRIVE SYSTEM
https://info.ornl.gov/sites/publications/files/Pub26762
.pdf
[2]
ラピスセミコンダクタ マイコン豆知識
https://www.lapis
semi.com/jp/common/miconlp/tips/tips 1/article 1/
[3 ]キーエンス HP.
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure
sys/machining/peripherals/mold.jsp
注:2020/3に作成頂いた分です。