スイッチのオン/オフ方法
前回のお話ではスイッチの調整にゲート-ソース間に電圧を印加させなければいけないと述べました。この意味を簡単に部品と回路図で描くと、図1の通りとなります。VgsはMOS FETのゲート-ソース間(Gate-Source)に印加する電圧です。図1は直流電圧で描いていますが、実際にはスイッチをオン/オフさせるため、負電圧から正電圧を印加します。
それではどれぐらいの電圧を印加したらスイッチがオン/オフするか気になりますよね?皆さんこういうときに何を確認したら良いかご存知ですか?そうです、ここでデータシート(Datasheet)というものが登場します。図2はローム株式会社製MOS FETのあるスイッチのデータシートです[1]。参考文献のURL先には全体で14ページもMOS FETの特性に関して記載があります。日本の製品なので、日本語で記述されていますが、海外の製品であればもちろん英語となります。技術者の方は技術の勉強だけでなく、英語の勉強も必須になってきますので、英語はできるだけ勉強しておいてください…。
早速、データシートのゲート-ソース間電圧の部分をみていきましょうか。まず、図3にある通り、1ページ目の下段にゲート・ソース間電圧という文字がでてきました(私の書き方と違いますが、ゲート・ソース間電圧とゲート-ソース間電圧の意味はここでは同じです。)。1つ目の赤破線で囲まれた部分に絶対最大定格という文字がありますが、これはMOS FETを動かす際に印加できる電圧や流せる電流、またはエネルギー、温度などが掲載されています。つまり、この値は超過するなということです。超過したら壊れますよーって意味です。例えば、2つ目の赤破線のゲート・ソース間電圧に着目してみると、static(直流)ではゲート-ソース間電圧として±20Vを超過するな、1Hz以上の周波数を持つ電圧であればゲート-ソース間電圧として±30Vを超過するなという意味です。私たち技術者はスイッチを使用する際に、それ以上の電圧が印加されないスイッチオン/オフ用回路=ゲート駆動回路を製作しなければならないのです。
これは絶対最大定格でしたが、スイッチがオン/オフする電圧はどこに記載があるのでしょうか?この電圧の記載はゲートしきい値電圧として、今回のデータシートには記載があります。このデータシートの記載から値を読み取ると、スイッチがオンするゲート-ソース間電圧は2Vから4Vの間ということになります。なぜ、スイッチがオンする電圧は一定の値ではないのか?それは素子がばらつきをもつからです。言い換えると、スイッチを確実にオンさせるためには4V以上の電圧をゲート-ソース間に印加、スイッチを確実にオフさせるためにはゲート-ソース間電圧は2V以下に設定しなければなりません。つまり、設計者はこのばらつきを考慮して、スイッチの選定やゲート駆動回路の部品選定を行わなければならないのです。では次にゲート-ソース間電圧はどんな電圧を印加すればいいと思いますか?正弦波?矩形波?これは次回に説明しましょう。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました。緊急事態宣言でコロナ感染者が減ってきていますが、まだ油断できませんね。ワクチンの効果に期待です。それではまた次回!