スイッチの駆動電圧
ちょっと長い時間が空いてしまいましたね…。みなさん、どんなことをしていたか忘れてしまいましたか?前回は MOS FET を駆動させる方法に関してお話していました。今回はその続きをしていきましょう。MOS FET のゲート-ソース間にどんな電圧を印加すれば良いでしょうか?とのことでしたが、オン/オフさせたいタイミングでゲートのしきい値電圧を越える電圧であれば正弦波でも矩形波でもなんでもいいです(笑)。でも一般的には矩形波が多いですね。これは明確にオン/オフのタイミングを区切れるからだと思います。ちょっと、正弦波と矩形波の違いを図 1 に示してみました。
vgs はゲート-ソース間電圧です。図 1 から矩形波電圧がゲート-ソース間に印加された場合は電圧が瞬間的にシュバっと立ち上がるので、MOS FET がオン/オフするであろうしきい値の 2V~4V をすぐに跨ぎ、瞬間的に MOS FET のオン/オフができそうですよね。一方で、正弦波電圧を見てください。正弦波電圧は MOS FET のしきい値電圧を跨ぐのにゆっくり跨いでいますよね。これだとどのタイミングで MOS FET がオン/オフするかわからないですよね。まぁ、4V 超えたあとや 2V 以下のときは確実にオン/オフしますけど…。ところで本当にゆっくりオン/オフさせても問題ないのでしょうか?否、問題はあります。ちょっと MOS FET のデータシートに戻ります。
再度、ローム株式会社様のデータシートから図 2 に示すグラフを拝借してきました。これにはあるゲート-ソース間電圧(VGS)のときにドレイン端子とソース端子に電圧を印加して(Drain-Source Voltage)、どれくらいの電流(DrainCurrent)がドレイン端子からソース端子に流れるかということを示しています。気にしないといけないところはオン抵抗がゲート-ソース間電圧によって異なっているということです。オン抵抗はどう見るかなのですが、抵抗はオームの法則から電圧を電流で割ればよいのはわかりますよね。図 2 の①らへんに着目してみましょう。Drain-Source Voltage が 0V から 1V あたりまでは Drain Current は線形的に上がっていっています。この区間の電圧ΔV と電流ΔI でオン抵抗が導出できそうですね。ちなみにΔはある区間の変化値を示しています。ここでは 0V から 1Vの区間でΔV は 1V、ΔI は 5A程度です。したがってこの区間の抵抗は 200mΩとなります。一方で、②の付近をみてください。ここらへんのΔVとΔIからオン抵抗を導出すると、ΔV=1 でΔI=0.5Aくらいなので、オン抵抗は 2Ωと非常に大きくなっていることがわかります。これはVGS=5.5Vですが、VGS=5Vであればもっと大きなオン抵抗となるでしょう。したがって、ゲート-ソース間電圧はある程度必要となるのです。初めの正弦波電圧と矩形波電圧の話とは繋がっていませんが、まずはこのことを覚えておいてください。ではどのようにゲート-ソース間電圧の大きさを決めるのでしょうか。と疑問に思うかもしれませんが、まずはメーカの推奨値で実験してみましょう(笑)。
今日はここまで。次回からデータシートの解説をしていきます。お読みいただきありがとうございました。
参考・引用文献
[1]ローム株式会社 HP:
https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet
/discrete/transistor/mosfet/r6020enz4c13-j.pdf